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陶遊 116号

やきものライフ応援マガジン「陶遊」にて風鈴ハウス風処が4ページ紹介されました。





《記事内容紹介》
風鈴ハウス 風処
2009年6月21日(金)オープン
神奈川県厚木市
風のゆらぎを聴く
わが国で唯一無二のプロの風鈴演奏家である吉田慎さんから、風鈴ハウスオープンのメールが編集部に届いた。「陶遊」80号の風鈴特集にご登場以来、ちょうど3年ぶり。早速取材にうかがった。
風鈴ハウス「風処」は神奈川県厚木市の北西、丹沢山系の麓にあった。見た目は普通の民家だが、中に一歩入るとそこはまるで別世界。よしずで覆われた室内は薄暗く、ふすまが取り去られた手前の和室には大きな座卓が置かれ、座布団がそれを取り囲んでいる。奥の部屋の天井からは無数の風鈴がぶら下がり、キーポード、PAシステム、コンピュータが備えられている。ここは吉田さんのスタジオであり、風鈴生演奏を聴かせるサロンでもあるのだ。
早速、作品を試聴させてもらう。
吉田さんの奏でる曲はすべて1分問に58というテンポである。これが人間本来のリズムで、1日に換算すると実際よりも少し長い25時間くらいとなるという。吉田さんはこれを「命のリズム」と呼んでいる。
実際に聴いてみると、かなりゆっくりに感じられる。一般にスローなバラードでも70~80ぐらい、軽快な曲では120ぐらいが平均的というから、そのゆったりさ加減がおわかりいただけるだろう。まるで悠々と流れる大河のようなシンセサイザーの調べにあわせて響く風鈴の音色が耳に心地良い。
透き通った風鈴の音色が共鳴し合って、音の「ゆらぎ」を生み出し、それが人の心に安らぎを与えてくれる。これこそ究極の癒しの音楽といえよう。日本音楽療法学会会員でもある吉田さんの風鈴演奏は、多くの人の共感を呼び、マスコミにも取り上げられている。
40歳にはまるで見えない若々しい吉田さんだが、音楽との出会いは中学生の頃、妹さんのエレクトーンに触れたことがきっかけだった。その後、誰に習ったわけでもなく、全く独学でシンセサイザーを弾き始めた。
以来25年、これまで作曲した曲は約千曲、、アルバムはほとんどがネット販売だが、すでに通算1万枚近い売上げを記録していて、この8月2日にリリースする「DeepBreath ディープブレス」が9枚目のアルバムになる。
森を吹き抜ける風音
「風鈴ハウス」は吉田さんの活動のべースであり、もちろんここで生演奏を聴くことができる。吉田さんの演奏を聴いているうちに、ほとんどの人が心地良い眠気を催してくるので、横になって聴いてもらうことにしているという。畳の上に横になって聴いたりしたら、日頃寝不足な雑誌編集者など熟睡してしまうのではなかろうか。
「ホール、ライヴハウスだけでなく個人の家や野外など、どこででも演奏します。今年の夏も日本各地へ出かける予定です、遮音された風鈴ハウスの中で横になって聴くのも良いですが、静かな、全く音のない、森の静寂の中で聴くのも、自然と一体になったような感じで良いですよ。演奏する方も、とても気持ちが良いんですよ。将来は森の中に、ログハウスのスタジオ兼サロンを持ちたいですね」と語る吉田さんは丹沢の自然を本当に愛していて、定期的に森林ガイドの仕事もしている。
車で10分ほどの森の中にある泉へ湧水を汲みに行くという吉田さんに同行した。丹沢大山国定公園の鬱蒼とした森は雨上がりの水をたたえ、静かに息づいていた。辺りにはひんやりした冷気が漂い、うっすらと靄も立ちこめて、幽玄な雰囲気である。清流が流れ落ちる滝壺の人きな岩の上に立ち、吉田さんが突然コカリナを吹き始めた。まるでその音色に森全体が耳を澄ましているようだ。こんなシチュエーションで風鈴の演奏を聴いたら、さぞや素晴らしいだろうと思う。
大変賛沢な時問を過ごしてから、われわれは湧水地までもついて行った。山裾から涼々と水が流れ出ている。乾いた喉に、柔らかな口当たりの冷たい水がとてもおいしい。大きなペットボトルに水を汲みながら「今日は誰もいませんが、週末は地元の人が行列を作って、並ばなきゃならないんですよ」と吉田さんが笑顔で話す。
丹沢の谷を吹き渡る風が頬に心地良い。この風が風鈴演奏家吉田慎さんの原点なのだと実感した瞬間だった。

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