武雄市若木町の山中にある「永野の風穴」は、8~9度の天然の冷気が吹き出す。中は20人ほどが入れる広さで、ぽたりと天井から水がしたたる。
保存会の緒方靖章会長(69)によると、流紋岩の巨石の隙間から水が染みこみ、地中に氷が張っているという。穴の中で風が対流して冷やされ、江戸時代には氷室として使われた。
今でも地元の人が天然の冷蔵庫として使い、スイカやビールがキンキンに冷えている。薄暗い穴の中で目を凝らすと、コウモリたちも涼んでいる。
伊万里市大川内山では、千個を超える風鈴が涼を運んでいる。8月末までの「風鈴祭り」は今年で14回目。個性豊かな風鈴が窯元の軒先で鳴っている。
大秀窯の風鈴は花火やトンボ、アジサイなどの透かし彫りで、薄手の繊細な姿で風に身を任せる。白磁や青磁に加え、モダンな藤色やレモンイエロー色も新作に加わった。「目で、音で楽しんで。ひとつひとつ音が違い、出来上がるまでどんな響きか分かりません」と大串秀則社長(57)。
チリン、チリンとかれんな音は、水の中で氷が触れあうような涼やかさ。金属とはまた違う余韻を引く磁器の響きは、非日常へと誘い、夏の窓辺に風情を沿えている。