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海風に誘われて~夏の瀬戸芸会場めぐり(上)豊島、女木島、男木島 神秘的に響く風鈴400個(岡山)


 「瀬戸内国際芸術祭2016」の夏会期が岡山、香川両県の7島2港で始まった。各会場とも新たな作品やイベントが加わり、春会期より魅力アップしている。9月4日までの“芸術の夏”から、新作を中心に主な見どころを紹介する。
     ◇
 涼やかな音が、何かを訴えるように響き合う。豊島(香川県土庄町)のほぼ中央部、檀山の中腹にお目見えしたのは、フランスの巨匠クリスチャン・ボルタンスキーさんの新作「ささやきの森」。木々の間につるされた風鈴400個が風に揺れ、神秘的なハーモニーを奏でている。
 人気の「島キッチン」などがある唐櫃岡地区中心部から徒歩で20~30分ほど。急な坂道が続くため、歩きやすい靴や飲料水が欠かせない。蚊が多いので、防虫対策も整えておけば万全だ。生と死をテーマにしてきたボルタンスキーさんの世界観に深く触れたいなら、唐櫃浜地区に6年前に開設された「心臓音のアーカイブ」も訪ねよう。
 豊島では、地場産業と関連づけた新作も存在感を放っている。特産のレモンにちなんだ唐櫃岡地区の「檸檬(レモン)ホテル」は、青春の甘酸っぱい記憶をよみがえらせたり、新たな出会いを演出する音声ガイドの“仕掛け”がユニーク。甲生地区の「豊穣:海のフルーツ」は、焼きのりをステンドグラス状に張り巡らせてできた幻想的な空間に身をゆだねられる。
 島の暮らしや風土、歴史に光を当てた新作は、高松市沖の女木、男木両島でも目を引く。
 女木島の目玉は、タイの現代美術家ナウィン・ラワンチャイクンさんによる「西浦の塔(OKタワー)」。島西部にある20軒足らずの過疎集落、西浦地区の住民の似顔絵パネルを高さ11メートルに組み上げた意欲作だ。描かれた人々の表情が一様に明るい理由を、ナウィンさんは「都会に出なくても幸せがある。住民たちは『ここでOK』と教えてくれたから」と話す。
 女木港にある観光案内所「おにの館」で制作意図などを紹介するビデオ(7分)を鑑賞した後、カラフルな「OKバス」に乗ってタワーへ向かおう。
 女木島と航路で結ばれた男木島では「Lighthouse(ライトハウス) Keeper(キーパー)」が加わった。映画「喜びも悲しみも幾歳月」で知られる男木島灯台に着想を得て、空き家内に漁具や灯台模型などを並べており、「記憶として再生するだけでなく、再稼働するきっかけになれば」と制作者で韓国出身のイム・ミヌクさん。
 前回、休校校舎を利用して好評だったプロジェクト「男木学校」は、島への移住ブームで小中学校が再開したため、旧旅館施設へ場所替えして復活。人気アーティスト集団・昭和40年会の小沢剛さんや会田誠さん、大岩オスカールさんらが「ちょっとまじめでユーモラスな」展示やワークショップを繰り広げている。

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