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月刊たまゆらPREMIUM

月刊たまゆらPREMIUM (東光社)2010年6月号。「この人に聞くP18~P25」にて「第10回心地良い音楽で気まま(氣のまま)に生きる 風鈴演奏家」として紹介されました。




【全文紹介】
第8回 心地よい音楽で「氣まま」に生きる 風鈴演奏家 風音
風音(かざおと)プロフィール
世界でたったひとりのプロの風鈴演奏家。出張演奏、学校等での講演会等様々な場所でコンサートを行う。(オフィシャルサイト:http://www.lifeact.jp/)
●心地よい音を求めてたどり着いた風鈴という楽器
?風鈴演奏を始めたきっかけを教えてください。
風音 作曲自体は十五歳の頃からやっていたのですが、作曲をしているうちにだんだんと心地よい音楽という方に傾いていったんですね。聞いていて心地よい、作っていて心地よい。心地よい音楽というのを探していて、色々なものを集めたんですね。今も増えているんですが、その中の一つが風鈴だったんです。
?いろいろある中の一つだったんですか。
風音 そうなんです。最初は四種類の風鈴を買ったんですよ。メジャーな江戸風鈴と岩手県水沢にある南部鉄で作られた南部風鈴、あとは海外のウィンドチャイム、そして貝殻の風鈴。その四つを自分のCDに入れて制作してみたんです。それがすごく良かったんですよ。自分のイメージにも近いと思いましたし。それからかなり風鈴に傾倒していきまして、沢山集めたという次第です。
?現在風鈴演奏家という肩書きでやってらっしゃいますが、風鈴だけではないんですよね。
風音 そうですね。心地よい音楽という部分ですね。ただ割合的には風鈴演奏というところがすごく多いですね。最初はCDの制作から入って、CDが結構出ているんですね。そして直接ライブで聞きたいというお話もありまして、風鈴をどうやってコンサートで見せていくのかというシステムを考えました。
?You tube演奏を拝見させていただいたのですが、風鈴の下に短冊みたいなものがあって、それを羽のようなもので撫でて演奏していましたね。あれは音階も調整してるんですか。
風音 音階のある風鈴は、江戸風鈴と竹炭、竹の炭の風鈴があるんです。竹炭風鈴は、僕の知り合いに竹炭をずっと作っている人がいて、そこにお願いして「ド」の音を作ってくださいと特注しています。竹炭は長さで調節して音が作れるんです。ただ結局鳴らすと様々な音が混じっていますから、「ド」だけの音ではないんですが、そのような音階に聞こえるような音を選んでいます。
 江戸風鈴は音階の風鈴が作れないんです。ガラスの風鈴って、ガラスをふくらませて作っているんですよ。ガラスの風鈴は大きさと厚さで音が変わってくるんです。ですから長年やっている職人でも、「ファ」の音を作ってくださいとお願いしても出来ないんですよ。手作りでやっていますからね。僕は手作りの風鈴が好きなんです。繁忙期は忙しくていけないんですが、冬に時間があると、直接風鈴の倉庫に行って何百という風鈴から探してくるんですよ。
?ご自分で音を聞きながらですか。
風音 ええ。それで集めるんです。結構苦労がありまして、割れたりすると大変なんですよ。割れても対応できるように、一応予備はあるんです。職人さんにお願いして作りました。音階以外の風鈴は二〇〇個ぐらいありますが、パーカッションのように使っています。
?ある意味風鈴のコレクターでもいらっしゃるんですね。
風音 風鈴ハウス「風処(かぜどころ)」というサロンを作りました。昨日もコンサートをやっていましたが、天井にも沢山風鈴が吊り下がっていまして、それを寝っ転がりながら見て楽しむんですよ。
?涼し気でいいですね。夏向けです。
風音 軒先に掛かっている風鈴は夏の風物詩なんですけど、眼を閉じて聞く風鈴の音は四季に関係なく楽しめるんですよ。
?目を閉じると違うんですか。
風音 風鈴は夏のものという固定観念があるので、風鈴自体を見ていると涼しいというイメージになると思いますが、音だけを聞いていると冬にもぴったりなんです。今から四年くらい前に冬の風鈴CDを作ったんです。『雪の物語』といいまして、雪をモチーフにしてつくってみたんですが、これは結構好評ですね。日本は風鈴というと夏ですが、海外にはあまり関係ない部分でもありますので。将来的には「春夏秋冬楽しめる癒しのサウンド」として広げたいですね。
●壺を吹くことから生まれた七沢笛
?去年から七沢笛という楽器を演奏されています。
風音 あれも心地よい音を求めて行き着いた一つの楽器なんです。これは二〇〇九年の夏からですね。
?神奈川県厚木市七沢で制作を始められたとのことですが、七沢笛は完全なオリジナル楽器なんですね。
風音 七沢笛は自分で制作して演奏をしています。元々は壺なんですよ。壺を鳴らすのが結構好きで、知り合いの陶芸家の作品の壺とか見ると、息を吹いて音を鳴らしていたんですよ。あとスーパーとかに行くとか瓶とかあるじゃないですか。ああいうものでもよくやっていました。七沢は陶芸家の方が沢山いらっしゃいまして、その方たちとご縁があって作るようになったんです。最初は壺を作ったんですが、どうせなら楽器として吹けるように吹き口をつけて拭いてしまおうと。そういう流れでできたんですよ。
?面白い形をしていますね。
風音 色々形はありますので。七沢笛は結構広がっていって、今日本各地でオーナー制にしていますが、結構増えつつあります。
?ホームページにもオーナー募集のコーナーがありましたね。
風音 今月はアメリカからも三つぐらいの連絡が来たんですよ。なので知り合いの方が英語のホームページを慌てて作ってくれました。今度はフランスのホームページを作ってもらえるように募集をかけているんですよ。
?フランスは多そうですね。
風音 英語圏とフランス語圏で広げていこうかなと思っているんです。
?音楽、しかもインストゥルメンタルですからどこへ行っても先入観なしで聞いてもらえますよね。
風音 歌もほとんど言葉は入っていませんので。
●音楽療法には副作用がない
?日本音楽療法学会の会員になられているということですが。
風音 やはり興味がありましたから。どんなことをやっているのか知りたくて会員になったんですよ。
?療法というよりはその両方でやっていることを知ることで、ご自分の音楽に何かプラスになるものがあるのかと思われたんですか。
風音 七沢笛のワークショップなんかは音楽療法にすごい近い部分がありますね。聞くだけではなくて、自分が参加していくことで響きを感じることで、様々な変化が出てくる。そういう体験は沢山来ていますので、音楽療法に近いと思います。
?療法といいますとどうしても固くなってしまいますが、みなさんで安らいで音楽をやるという感じなんでしょうか。
風音 体の状態が変化すればすべて治療になりますので。食べ物とかは一般の人がやると薬事法に引っかかりますが、音楽は副作用がありませんので。ただ個人的にはそんなに効能、効果のことはおおっぴらには言わないことにしています。やはり演奏してまずは心地よい音を提供したいと思っています。
?病は気からといいますが、心の持ちようを音楽は変えていけるということでしょうか。
風音 変化したということがあれば、僕はいいと思います。
?音楽療法というものに関わったきっかけを教えてください。
風音 周りからの声ですね。風鈴ミュージックが治療院とか整体院、病院で使われることがあるんですよ。使っているとすごく効果があるという声を頂いていたんです。健康雑誌などでも取り上げていただきまして、健康雑誌の老舗『壮快』でも九回ぐらい、「魔法の音」として紹介されたんです。そういうことがありましたので、風鈴ミュージックと言うのは体と心にもいいんだなということが分かりました。
?患者さんも演奏するんですか。
風音 はい。そういうアイテムがあってやっていくと。僕の場合は音楽家ですから、聞いてもらって気持ちいというスタンスですので、広い意味での音楽療法だと思っているのですが、狭い意味では少し違うのかもしれません。
?始めから音楽での癒し、というものを目指されていたわけではなくて、ミュージシャン活動のあとから付いて来たということですか。
風音 実際にCDを買ってくださった方の、声や体験が来るんですよ。
?よく眠れるようになった、という体験談が多かったですね。
風音 睡眠薬が必要なくなったというご意見は多いですね。
?今の世の中は肉体もそうですが、心の部分で疲れてらっしゃる方が多いと思いますので、眠れるというのは一番癒しになるのかなと思いました。コンサートも多くされているとか。
風音 日本各地で年間一〇〇回以上のコンサートをおこなっています。関東と関西が中心ですが、呼ばれればどこでも出張しています。
?癒しの効果というのは音楽活動のあとから付いてきたものとおっしゃっていらっしゃいましたが、あとから改めて癒しというものに興味が出てきたというものなんでしょうか。
風音 周りがそう言ってくれるんですが、自分自身は、自分がやっていて気持ちいいことしかやっていないんですよ。ですからあまり癒しという言葉も使いたくはないんですよ。適当な言葉がないのでそうやっていっていますが。自分が気持ちいいと思っているだけですね。
?十五歳から作曲されていたということもあって、とにかく音楽にご興味があったんですか。
風音 響きというのが僕は好きなので。音というのは近くで聞くとまた全然違いますよ。
?先ほど演奏を聞かせていただきましたが、聞くというよりは体全体に迫って来る感じですね。
風音 細胞が震えますから。
?たまゆらかもしれませんね。あと、ワークショップを横浜のあざみ野で行っているそうですね。
風音 月イチでやっています。
?内容は先程おっしゃってましたが、七沢笛を皆さんで演奏なさるんですか。
風音 前半が私たちの演奏で、後半はみんなで演奏をします。これが面白いんですよ。
?音楽療法のようですね。面白いというのはどういう部分でしょうか。
風音 ちゃんとストーリーが有るんです。最初は静かなところから始まって、少し盛り上がって、また少し下がって、最後は大盛り上がりで終わる。
?流れは誰かが決めるんですか。
風音 やっているうちにだんだん決まってきましたね。
?月に一回、だいたい何日位とか何曜日とか決まってらっしゃるんですか。
風音 特に決まっていませんね。今まで満月の時にやっていたんですが、今度名古屋が満月に入ったりして、金曜の夜などにやっていますね。
?満月というのは理由があるんですか。
風音 月の波動の影響を受けますので、その時にやるのが楽しいかなと。生物というのは月の影響をすごく受けていますので。例えば満月の日に満潮になると魚が活発になって、そこで命の誕生があったりしますよね。人間も満月の日に交通事故が起こりやすいとか、色々あるんですよ。
?では満月の日に音楽をやることによって、より活発になるんですか。
風音 そうですね、なにか変化がないかとか。
?その変化というのは何を期待されていらっしゃるのでしょう。
風音 特にそういうのはないです。押し付けみたいなことはしませんので。
?その方がそれぞれの思いというのが出やすいんじゃないかということでしょうか。
風音 あまり理屈めいた感じはなくて、まずは自分が楽しんでいる。それに共感する人が集まってくる、それだけなんです。
?ではリーダーになって何かをやるというのではなくて、みんなで演奏するというのが一番なんですか。
風音 そうですね、感じて欲しい。七沢笛を吹くことは気持ちがいいですから、それを体感して欲しいというだけですね。
?今は七沢笛が一番お気に入りですか。
風音 風鈴と七沢笛の二本柱ですね。ただ、色々な心地よい音を集めていて、今の状態になっていますので、良い音があると欲しくなるというのはあります。
?七沢笛のきっかけも、壺を吹かれることから始まってますよね。西洋楽器寄りではない。
風音 そうですね。西洋音楽というと、楽譜とかがあってそのとおり見て引くというのがありますが、そういうものより感覚的にやる方が合っているみたいですね。
?先ほどのライブでもお打ち合わせが無かったというのを聞いてビックリしたんですが。
風音 その響きを楽しむコンスタントです。僕の子供たちは西洋音楽をやっています。クラリネットとか。それはそれでスゴクいいと思いますし。それぞれ面白いですよね。
?七沢森林公園の案内人、ガイドのお仕事もされているそうですね。
風音 最初は一人で行っていて、みんなに良いよと伝えていたんですよ。すると「行きたい」という人が増えていきまして、ガイドも仕事になってやっているんです。心理セラピーに近い部分はあるかもしれませんね。サウンドセラピー、プラス、森林セラピーです。
●がんばらないで軽やかに行動
?ご自身が癒しに興味があったわけではないですが、好きなものがことごとく癒しに関係していったんですね。
風音 どちらが楽しいかで選んでいたらそうなっていましたね。やはり楽しくないと続きませんから。何でもそうですけども。自分が満たされてないと周りにも伝わりませんし。まず自分がハッピーになってないといけないと思います。
?ご自身にネガティブになられることは少ないですか。
風音 それはもちろんあるかもしれませんが、少ないと思いますね。
?音楽を始められてからずっと少ないんですか。それとも最近少なくなってきたんですか。
風音 やはり自分でそういう環境に入ったんでしょうね。サラリーマンだった時期もありますが、その時はストレスも多かったですし、やりたくないこともやりました。今は自分の好きなことしかやりませんから。それに賛同する方がお客様がいて、何とかやっています。自営業ですから不安はありますが好きなことをやっていますので。最近は書を書いているのですが、「がんばらないで軽やかに行動」という言葉に人気があります。
?「軽やか」にとは、具体的にどんな感じなんでしょうか。
風音 サラリーマン時代にそれに気が付いたんです。結構みんな「頑張ります、頑張ります」って言うんですよ。ですが僕は実際に行動しているかどうか見るんですよ。すると行動していない人が結構多いんです。「頑張ります」って言いながら全く行動していない。ですから「頑張ります」という言葉は必要なくて、行動すればいいわけなんです。それであの書を書いたんです。もう頑張りますは言わない、という気持ちです。
?気持ちのいい不言実行ですね。「頑張らないで軽やかに行こう」だと出来そうな気がします。
風音 頑張りますという言葉の中には苦しいけれど、なんとかやりますという気持ちが入っているんですよ。でも、自分が楽しいことというのは頑張りますにならないんです。例えば子どもがゲームをやるときには頑張りますって言わないですよね。僕はゲームをやると十分ぐらいで疲れてしまうんですよ。僕は頑張らないと出来ない。子供は頑張らなくても二時間でも三時間でもやってしまうので、すごいですよね。それなんですよ。ゲームだけでなくて、好きなこととか楽しいことをやっていると頑張りますという言葉は出ないんですよ。そして気持ちいいから続けるんですね。そうすると、最終的に夢とか目標が達成していくのじゃないかと思っています。これが僕の持論なんです。
?確かに好きなものは人にやめろと言われても止めたくないですし、続けてしまいますね。
風音 それがプラスのことだったらいいわけです。例えばパチンコが好きな人は勝てなくてもずっとやっているわけじゃないですか。パチンコが仕事になればいいのかもしれませんが。
?たまにマンションを建てたとかいう人もいますが、なかなか難しいですよね。
風音 あれは頑張らないでマンションが立ったんでしょうね。僕の場合は音楽が好きで、それがたまたま賛同する人が多くて、応援してくれる人が沢山いましたので。全国のいろんな場所で、応援してくれる人がいますから、これは本当にありがたいですね。
●「氣まま」に生きる
?ここ二、三年ぐらいでかなりコンサートが増えましたね。
風音 そうですね、独立して五年経ちますが、それで生活が出来ています。
?呼ばれて行くことの方が多いんですか。
風音 同じぐらいですね。ですがすべて自分でやっているわけではないんです。たくさんの人から応援をいただていています。
?人脈といいますか、お友達なんでしょうか。
風音 人生のパートナーですね。
?人生のパートナーが何十人もいらっしゃるということですね。
風音 それは僕だけではなくてみんなそうだと思いますけどね。それが仕事かお金だけの繋がりなのか、もしくはそれ以上の繋がりなのか、これは違いますよね。
?サラリーマン時代ですとどうしても仕事上の繋がりが多くなってしまいますよね。
風音 それがほとんどですよね。仕事を抜けると全然繋がりが無くなってしまいます。
?風鈴演奏家になられて、人付き合いも変わってきたということでしょうか。
風音 会わなくなる人はご縁がなくなって繋がってきませんね。やはり今繋がっている人はご縁があるんでしょうね。全てタイミングだと思いますね。タイミングが無い人は、絶対に合いませんし、ご縁もありませんから。
?音との出会いもそうですかね。七沢笛を作られるというのがまずすごいなと思うんですが。壺を楽器にしてしまおうという発想が、普通はなかなか無かったなと思いましたね。毎日音のことを考えられているんですね。
風音 生活の中に入っていますから。
?面白いものはもっと面白くしたいということですか。
風音 そういうことさえ考えないのかもしれないです。気持の良いことをやっているだけですね。本当に気ままなんです。この気ままというのはスゴクいいなと思うんです。気も、中に米が入っている「氣」という漢字がいいですよね。気の向くままに動いていく、というのがいいと思います。
(了)

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