福岡県福津市の宮地嶽神社で「七夕風凛(ふうりん)まつり」が開かれている。8月末までの予定で行われている夜間ライトアップにより、青い光で照らされた3000個あまりの風鈴が「天の川のような美しさ」「夜空の星みたい」と話題になっている。昼間の厳しい日差しが和らぎ始める夕暮れ前、カメラを手に神社へ出かけた。
星空に願いを
宮地嶽神社では2023年に初めて、奥の宮へと続く参道に風鈴をつるすアーチを設けた。参拝者に喜ばれたことから、今夏は風鈴の数をさらに増やしてライトアップの演出も加えた。「輝く風鈴を天の川に見立て、お祈りしてもらおう」という試みで、予想を上回る人数が訪れているという。
境内でまず目に入るのは、楼門で揺れる大きな吹き流しと笹飾り。神社側には、旧暦の七夕(今年は8月10日)まで飾りたいとの思いもあったようだが、8月に入ると茅の輪くぐりの神事が始まるため、茅で編んだ輪と入れ替わるそうだ。
いったん本殿を離れ、緩やかな坂をしばらく上っていく。たくさん並ぶ赤い鳥居の先に、太陽の光を反射してキラキラと輝く風鈴が見えた。緑、黄色、青、紫――。約50メートルにわたり、カラフルな”天の川”がかかっていた。
セミの大合唱と鳥のさえずりが聞こえる林の中の参道。時折、そよ風を受けた風鈴が涼しげな音を立てる。訪れた人たちは、しばし暑さを忘れ、風鈴が奏でる夏の調べを楽しんだり、色鮮やかなアーチをスマートフォンで撮影したりしていた。
日が沈み、辺りが暗くなった19時45分頃、LEDライトが点灯された。風鈴が光に照らされ、参道に青い光の”トンネル”が現れる。「うわー、きれい」「すごい!」。あちらこちらで感嘆の声が漏れる。色彩豊かだった境内が、夜には幻想的な空間に。頭上で輝く光の帯は星空まで続いているかのようだ。
気がつけば参拝者の姿も増えている。家族連れやカップルら、その数200人ほど。聞こえてくる会話は英語、中国語、韓国語と国際色豊かだ。風鈴の音を近くで聞こうと、父親に肩車をしてもらい、携帯用の扇風機を近づける女児の姿もあった。
早い時間から神社を訪れ、ライトアップまで境内を散策する人も。北九州市八幡西区の会社員・安田多恵子さんもその一人。同僚に勧められ、足を運んだそうだ。
「太陽の光で風鈴がキラキラ光る様子がきれいだったけれど、夜はまた違う美しさがありますね」。この日は写真を50~60枚ほど撮ったといい、「昼と夜、両方とも見たほうがいいですね」と笑顔を見せた。
宮地嶽神社といえば、玄界灘に沈む夕日が参道を照らす「光の道」が広く知られている。毎年2月と10月のそれぞれ数日間、条件が合えば幻想的な光景を目にすることができ、海外からの旅行客を含む大勢の参拝者を魅了している。
神社の湯治祐成権禰宜は「光の道と同じように、風鈴の天の川が参拝者に楽しんでもらえる『新たな光のスポット』になれば」と話していた。
撮影を終え、境内に腰を下ろして“天の川”を見上げていると、やさしい風が吹き、澄んだ響きが辺りに広がった。もし「星が降る音」が聞こえたなら、こんな音色なのかもしれない――。夏の夜空の下、穏やかな気持ちで星に思いを巡らせた。
宮地嶽神社の夜を彩る“天の川”は、20時頃から22時にかけて8月末(予定)まで楽しめる。