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北陸夏の涼 余韻楽しむ真ちゅう製風鈴(富山)


 「チリーン」。風に揺られ、心地よい音が響く。富山県高岡市戸出栄町の鋳物メーカー「能作」のショールームには、50種類以上の風鈴が飾られていた。一般的に知られる鉄製ではなく、銅と亜鉛の合金である「真ちゅう」製。伝統産業の高岡銅器の加工技術を応用して作られたものだ。
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 能作の広報担当者、谷直輝さん(26)は「他の産地では真ちゅう製の風鈴はあまりない。鉄製よりも低く落ち着いた音で、余韻が楽しめる」と教えてくれた。そういえば、真ちゅう製の風鈴の音色は、なんだか仏壇のおりんの「チリーン」という音と似ている。「日本人が昔から慣れ親しんでいる音なので落ち着くのではないか」。確かに子供の時に祖母宅で鳴らしたおりんの音と一緒。風鈴の音を聞いていると懐かしい日々がよみがえってきた。
 同社では2003年ごろから真ちゅう製の風鈴の製造をスタートさせたという。真ちゅう製のベルはその数年前から製造していたが、日本ではあまりなじみがなく浸透しなかった。そんな時、取引先のあるメーカーから「日本の夏の風物詩である風鈴にしてみてはどうか」と助言があり、商品化。たちまち同社の夏の主力商品となり、全国の百貨店などで販売されるようになった。売り上げも年々、右肩上がりという。
 製造現場を見たくなった。すると「『夏の涼』の企画とは全く逆かもしれませんよ」と谷さん。ショールームと同じ敷地にある工場では、たくさんの職人が汗をたらして作業をしていた。製品の原型となる木型から砂で鋳型を作り、そこに1000度以上の液体の真ちゅうを流し込む。型から取りだした製品はろくろなどで加工する。ほとんどの工程が職人の手作業だ。だからこそ「細やかな製品ができる」と納得した。涼しげな風鈴の音とは裏腹に、ワイシャツは汗まみれになりスーツ姿で取材したのを後悔した。
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 その後、北陸新幹線の新高岡駅(高岡市)にも足を運んだ。構内に約15種類の高岡銅器の風鈴が飾られていると聞いたからだ。高岡銅器協同組合(同市)が高岡銅器をPRするために、市内の銅器メーカー7社が協力し、毎年夏に実施しており、今年は高岡、新高岡両駅に飾られている。
 駅の自動ドアが開くと風が流れ込み「チリーン」と風情のある音が構内に響く。北陸新幹線や鳳凰(ほうおう)など高岡らしいデザインを施したものなどがずらりと並んでいた。思わず足を止め、涼しげな音を堪能する駅利用者の姿も。
 同組合の四津川元将理事長(53)は「全て高岡の銅を使って作られたもの。高岡の技術を知ってもらいたい。銅で作った風鈴の音もいいですよ」。取材を忘れ、懐かしく風情のある音に聴き入っていると、製造現場の見学中に噴き出していた汗もいつの間にか止まっていた。
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 「能作」の風鈴は、ゴールド、シルバー、ピンクゴールドなど多彩なカラーバリエーションをそろえ、3780〜9720円(税込み)。形は三角や四角などの一般的なものから、フクロウや蘭(ラン)、UFOなどさまざま。県内外とイタリア・ミラノに九つの直営店を構え、同社の公式オンラインショップなどインターネットでも注文できる。問い合わせは、同社(0766・63・5080)。

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