「明珍火箸」で知られる兵庫県姫路市の鍛冶師、明珍家の歴史を紹介する特別展「MYOCHIN 伝統の継承と新たな飛躍」が、圓山記念日本工芸美術館(同市西今宿)で開かれている。江戸時代の甲冑(かっちゅう)のほか、現当主の宗理さん(74)と三男の敬三さん(40)の火箸や、次男で刀匠の宗裕さん(42)の日本刀など計約90点が展示されている。
志賀直哉「暗夜行路」にも登場の名産品づくり
明珍家は平安時代以降、代々甲冑師として活躍。明治以降、火箸づくりに変わり、作家、志賀直哉の代表作「暗夜行路」に登場するなど姫路の名産品として知られるようになった。昭和40年代に火鉢が使われなくなり、宗理さんが火箸を「風鈴」として売り出すと人気を博した。現在は県の伝統的工芸品に指定されている。
展示では、次代を担う宗裕さんと敬三さんにスポットをあてて紹介。宗裕さんの日本刀は平成15年のデビュー作から経済産業大臣賞(作刀部門)の受賞作など16振りが並ぶ。敬三さんがチタンを加工して製作した火箸風鈴なども陳列され、伝統の技と進取の気性が培ってきた明珍家の作品を味わうことができる。
徳川綱吉の側用人、柳沢吉保の甲冑注文も
また、江戸幕府5代将軍徳川綱吉の側用人、柳沢吉保が製作を依頼した甲冑の仕様を細かく指示した注文書や、刀のつばのデザインが記録された約10メートルに及ぶ巻物など、明珍家伝来の古文書も展示されている。
敬三さんは「積み重ねてきた伝統を継承しながら、常に新しい音色に挑戦し続けていることを知っていただければ」と話す。
12月4日まで。午前10時~午後5時(入館は午後4時半まで)。月曜休館。問い合わせは同館((電)079・292・3433)。