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音楽療法、情緒の安定に期待(朝日新聞)

 音楽療法は、20世紀初頭、ロンドンの病院で鎮静的音楽の演奏を提供したことから始まったとされており、情緒の安定という効果が期待されます。ただし、認知症患者さんは個々に持っている演奏の速さや調性・音量の好みが違い、またそれは日によっても異なるため、患者さんの反応を細かく観察しながら選曲しなければならないという難しさが指摘されています。
 そして、『認知症疾患治療ガイドライン2010』(医学書院発行, 日本神経学会監修, 東京, 2010, p118)においては、「現時点では、音楽療法の効果は肯定できるものではない」と記載されています。
 情緒の安定といった効果だけではなく、認知症の中核症状に対しても有用とする報告も一部にはあるようです。認知症に対する音楽療法の第一人者のひとりである三重大学大学院医学系研究科認知症医療学講座の佐藤正之准教授は、「音楽がアルツハイマー病(AD)患者の記銘力を増強するとの報告もある。Simmons-Sternらは、知らない曲の歌詞を画面に提示し覚えてもらう際に、その歌を鳴らした状態と、歌詞の朗読を鳴らした状態とを設定し、再認課題の成績を比較した。その結果、健常者では両状態間で差はなかったが、AD患者では歌を鳴らした状態のほうが成績が有意に良好であった。音楽聴取によるこれらの改善機序については、いずれも音楽によるリラックス効果や注意覚醒効果を挙げているが、ADでは海馬の萎縮のため扁桃体が記憶に果たす役割が相対的に大きくなり、音楽が扁桃体を刺激したのではないかとの意見もある。」(佐藤正之:高次脳機能障害と認知症に対する音楽療法. BRAIN and NERVE Vol.63 1370-1377 2011)と述べています。
 上記報告のようにエピソード記憶に対する効果だけではなく、音楽は情動に直接はたらきかけることから「認知症の行動・心理症状」(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia;BPSD)に対する効果も期待されており、システマティック・レビューでもその有効性が確認されてきております(Ueda T, Suzukamo Y, Sato M et al:Effects of music therapy on behavioral and psychological symptoms of dementia: A systematic review and meta-analysis. Ageing Res Rev Vol.12 628-641 2013)。
 2013年7月1日付週刊医学界新聞(第3033号)において佐藤正之准教授は、音楽療法に寄せる夢を以下のように熱く語っておられます。
 「筆者は音楽の持つ力を信じる。“言葉で表せないものがあるから音楽がある”というマーラーの言葉のごとく、数字や文字を超えたところにこそ音楽の意味が存在すると信じる。しかし、それであるからこそ、音楽がヒトにもたらす効果についてはことさら慎重に評価したい。誰が見ても科学的に疑義のないデータを通して、音楽療法の有効性を世に示したい。愚直なまでに科学に徹することが、医療現場で音楽療法が市民権を得るための最短の道である。」

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